2007年9月16日日曜日

産業遺構 立坑(たてこう)1

炭坑の有った街 福岡県志免町に現在も立つ立坑です。
(志免町は福岡市に隣接する町で、私もこの町の町民です)


地下で採掘した石炭を、地下から地上まで巻き上げるための施設です。
現在はもちろん利用されていません。



上部は1スパン分オーバーハングしています。下のバリケードのすぐ上には、コンクリート製の庇が設けられ、上から吊る斜材が見えています。








庇の正面から見ると、反対側もオーバーハングしています。









トップヘビーの形態が、視覚的なアンバランス危うさを増幅し、力強い形態を強調しています。



コンクリート表面はクラック(ひび割れ)や爆裂(錆びた鉄筋の露出)だらけで痛々しい姿をさらしています。皮肉なことに歴史を刻んだテクスチャーがこの造形の存在感を増しています。



躯体に蔦が張り付いています。生命体の血管のようにも見えます。しかし、寄生され必死に耐えているようにも見えます。
柱の主筋が露出しているところが、さらに痛々しく見えます。



数年前に総合福祉センターが整備されました。



数百メートルの深さに新鮮な空気を送っていた換気口です。レンガを4重にアーチに積層して造っています。




人間の鼻のように2又に分かれています。流体力学を生命体に学んだのでしょうか。






鼻の上から見た状況。そっくりではないでしょうか。



鼻の内部。美しいレンガアーチと、下りていく階段が見えます。当時のデジカメは能力がこの程度で残念です。



2重のプロペラが残っていました。







プロペラは木製です。この炭坑は海軍の炭坑で、鉄が不足していたのでしょうか。それとも、プロペラは軽量化のため、当時は木が最適な材料だったのかも知れません。





残念ながら、この換気口は現在は残されていません。道路工事のため解体され埋められてしまいました。本当に残念です。奥に立坑が見えます。






産業考古学的な価値もさることながら、意匠をそぎ落とした機能美と時を刻み込んだ表面のテクスチャー、その圧倒的な存在感は、残す価値ある遺産として大切に保存して欲しいと思います。







立ち入りが制限され、見守り保存(費用をかけないで保存)という方法がとられています。
しかし、表面には蔦がからまり、何故かそのままにされています。蔦を建築にからませるのは良くありません。特にこの立坑は鉄筋コンクリート造であっても、表面はクラックだらけ爆裂だらけで、蔦の根がコンクリート躯体に深刻な影響を及ぼしていることは間違いないし、コンクリート片の剥離も促進します。このまま放置すればあと10年はムリでしょう。費用をかけなくても容易に出来る蔦の除去だけでもしてもらいたいものです。




蔦がからむ夏の立坑全景。








躯体に蔦が張り付く。「生命体の血管のようにも見える冬」に比べると美しいのですが・・・。

(現在は、蔦は除去され、大切に保存されています。)



シード建築設計事務所 http://www.seedhp.com


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